BtoB企業の新規開拓、カギは「想起集合」と「第一想起」 成功・失敗事例から解説
2026年2月21日
「想起集合」に入り、そして「第一想起を獲得すること」。これがなぜ、新規開拓につながるのか? BtoB企業のプロモーションを行う当社クライアントの成功事例、失敗事例を交えながら解説します。(BtoC企業では、想起集合の戦略は以前から重視されていますが、本稿ではBtoB企業に関してまとめています)
では本題に入っていきましょう!
目次
BtoB企業の新規獲得 まずは想起集合に入ることを目指す
想起集合とは、製品・サービスの購入を検討する際に、記憶から自然想起される(=自然に思い浮かべる)製品・サービス群を指します。企業が、何かの購入や発注を検討をする際、大抵は担当者が想起した製品・サービス群の中から、いずれかが選ばれます。反対に想起されない製品・サービスは、選ばれる可能性が極めて低くなるため、まずは想起集合に入ることを目指します。
次に、第一想起の獲得を目指す
自社製品・サービスが想起集合されるだけでは不十分で、目指すべきは第一想起の獲得です。
BtoB企業の購買行動 55%は「第一想起したものを購入」
BtoCの購買行動において、第一想起されるものは、そうではないものと比較して購入されやすいことが知られています。実はBtoBの購買行動においても同様で、第一想起された製品・サービスの55%は購入されていることが明らかになっています(出典:WACUL)。
とはいえ、第一想起獲得は簡単なことではありません。下記図をご覧ください。「第一想起(右上の赤)」を獲得するには「想起集合(右から2列目のオレンジ)」に自社ブランドが入っている必要があり、「想起集合」に入るには「処理集合(オレンジ)」に入っていること。「処理集合」に入るためには「知名集合(オレンジ)」に入っていなければなりません。

この図は、第一想起獲得に向けたブランディング戦略を考える際の指標として知られています。分かりやすく説明すると、一番左下のオレンジ色の箱「入手可能集合」から、一番右上の赤色の箱「第一想 起」にかけて、トーナメント戦に勝ち続けることで「購入率55%のポジションをとれる」ということです。
各集合体の意味
入手可能集合人々が物理的に手に入れることができる商品・サービスの集合体のこと。つまり市場に出回っている商品・サービス群を指します。
知名集合/非知名集合「入手可能集合」のうち、1人の人間がその商品・サービスを知っているかどうかで分けているのが「知名集合」or「非知名集合」。知っている商品・サービスだと「知名集合」に。知られていなければ「非知名集合」にカテゴライズされます。例えばカフェ。国内には個人事業主が運営する小さなカフェから大手が運営する有名チェーン店まで相当数あります。スタバ、タリーズ、ドトール、コメダ珈琲は多くの人にとって「知名集合」に入ります。一方で「ポツンと一軒家」のような、山奥にひっそり佇む「ポツンとカフェ」があったとしたら、多くの人にとって「ポツンとカフェ」は知らないカフェ。そのため「非知名集合」にカテゴライズされます。非知名集合に入った商品・サービスは、存在自体を知られていないので、当然ながら購入検討されることも、購入されることもありません。
処理集合/非処理集合商品・サービスの特徴をしっかり理解できているかどうか、のこと。理解されていれば「処理集合」にカテゴライズされますが、理解されていなければ「非処理集合」にカテゴライズされます。案外と多いのが「商品名・サービス名は知っているが、何なのかはよく分からない」というケース。筆者ゴトですが、新幹線に乗るとき、だいたいどの時間帯・車両に乗っても見かける、ある企業(Y社)のポスター広告があります。何年も見続けているので、気づいたときにはY社の名前を覚えていました。「Y社=新幹線広告」と出てくるほど、強く認知していますが、今現在もY社が具体的に、何をしている企業なのか、よく分かっていません。つまり筆者にとってY社は「非処理集合」の企業です。一方で、Y社を社名だけでなくサービス内容までしっかり理解できている場合は、その人にとってY社は「処理集合」に入ります。いくら商品名・サービス名を認知していても(=知名集合に入っていても)、何の商品・サービスを提供しているのか? まで理解が進んでいなければ、購入検討されることなく、ここで脱落します。せっかく名前を認知してもらえてるのに、もったいない。まさに機会損失のケースです。
想起集合/保留集合/拒否集合処理集合に無事カテゴライズされた商品・サービスは、次のフェーズで3分類されます。まずは「想起集合」。商品・サービス名も認知していて(知名集合クリア!)、ある程度、特徴などを理解している(処理集合クリア!)。その中でも特に「問合せてみようかな、利用を検討してみようかな、商談をお願いしようかな」という検討・購買の可能性がある商品・サービスは、想起集合にカテゴライズされます。それに対し「拒否集合」は、商品・サービス名も認知していて、特徴などもおよそ理解しているけども「購入することは無い」と思われている商品・サービス群です。例えば「業界内の評判が良くない」「以前話したときの担当者の印象が悪かったな」といったイメージや経験があると、問合せよう・相談してみよう、とはならないですよね。ここにカテゴライズされた商品・サービスが想起集合に入ることはほぼ無いので、ここで終了です。「保留集合」は、商品・サービス名も認知していて、特徴もおよそ理解しているが「想起集合」の中には入れなかった商品・サービス群のこと。悪くはないが、購入や問合せをしたいと思う程、良いわけでもないといった、宙ぶらりんの立ち位置です。様々な努力施策を行えば「想起集合」に入れるだけに、非常に勿体ないのが保留集合群です。
当社は定期的にSEO施策を外部発注しています。SEO会社は、ものすごい数の企業がひしめきあっていて、怪しそうな企業から、高い知名度を誇る実績豊富な企業までピンキリです。そのうち「処理集合」として6社のSEO専門の企業名が当社の中では出てきますが、その中でも「次お願いするときは、この会社かな」と想起する企業は2社。その2社は当社の中で「想起集合」に入っていることになります。それ以外の3社は、検討に入るほどの魅力や親近感、好意があるわけでもないので「保留集合」。残り1社は、以前商談したことがあるのですが、担当者さんの流れ作業的で事務的な商談姿勢にガッカリした経験があるため、当社の中では「拒否集合」に入っています。
第一想起/その他の想起集合ようやくたどり着きました「第一想起」。「想起集合」の中で一番最初に想起される商品・サービスのみが勝ち取ることができるポジションです。既述の通り、55%のビジネスパーソンが、第一想起した商品・サービスを購入するため、第一想起を獲得できれば、プル型で問合せや商談を獲得でき、仮に他数社と比較検討されても、かなり有利な状況です。
BtoB企業、3社の成功事例・失敗事例
実際に当社でお手伝いさせていただいたクライアント様の事例をご紹介します(特定できないよう、一部情報を編集)。BtoBマーケティングのコツが見えてくると思います。なお比較しやすいよう、当社のBtoBプロモーションプランのうち「メルマガ配信広告」を出稿してくださった3社様を事例としてご紹介します(当社のBtoBプロモーションプランは70以上、ご用意しています。ヘルスケア業界特化のBtoBプロモーション施策はご相談ください)。
<事例1>仕事実績ゼロ、設立2か月のスタートアップP社

仕事実績ゼロ、業界認知ゼロ、業界内プレゼンスもゼロの、立ち上がって2か月程のスタートアップP社から「メルマガ広告を出したい」とのご相談。求める成果は「受注を前提とした問合せ獲得」。そして予算の関係から広告出稿は1回のみ。
上記図で考えると「非知名集合(上記図の左から2番目のグレー)」 の状態から、いきなり「購入・受注(上記図の右上の赤)」を目指すことになります。仕事実績もなく、業界内の信頼も全く無い。且つたった一回のメルマガ広告。相当ハードルが高い案件です。99.9%成果は出せないことは明白だったので、それをお伝えしたものの、「それでも出稿する!」とのこと。
結果は予想通り、問合せゼロ(汗)。こういったケースでは本来、「非知名集合」に入っている状態を抜け出すことを最優先して一定期間、認知施策を行い「知名集合」への移行を目指しつつ、「処理集合」に入る施策も同時並行で進めます。
また、P社のように「仕事実績ゼロ」は、BtoBビジネスにおいて大きなボトルネックです(あなたもきっと仕事実績ゼロの企業に、社内の大事なシステム開発の依頼をしようとは思わないはず…)。そのため仕事実績は、何としてでも真っ先につくりましょう。
とはいえ、仕事を獲得できないと実績を作れない。でも実績を作れないと仕事を獲得できないー。この「鶏が先か、卵が先か問題」をクリアするのは簡単ではありませんので、「最初の数個の実績、どうやって作れば良い?」でお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。当社にて最初の数件分の実績づくりをお手伝いさせていただきます。
<事例2>業界内認知トップクラス、東証プライム上場企業L社

同じく「メルマガ広告」を出稿したいとご相談くださったのは、ヘルスケア・医療業界では高い認知を誇り、優良企業として知られる東証プライム上場企業L社。ブランド力の強さは群を抜いており、信頼性も抜群。ヘルスケア業界内の多くのビジネスパーソンにとって同 社サービスは、上記図の「想起集合」に入ります。人によっては「第一想起」に入る企業です。
そしてL社のメルマガ広告実施の目的は、事例1のP社のように「サービス利用の問合せを取ること」ではなく、「ホワイトペーパー配布により、リード情報を獲得する」ことでした。
以上のことから、L社の場合は1回きりのメルマガ広告出稿であっても、P社と比較すると、成果を出すのは格段に容易です。実際にL社の目標としていた数字以上の成果を出すことができ、その後も度々リピート発注を頂きました。
<事例3>仕事実績ありのスタートアップK社 ただし競合多数

事例1のP社と異なり、こちらのスタートアップK社は設立4年目で仕事実績も複数あり。ただし、日ごろからヘルスケア業界のリサーチ・分析・主要人への取材を行っている当社の感覚では、P社と同じくK社も業界人の間では「非知名集合」に入る印象がありました。
理由の一つは、同社と同じサービスは、すでに複数の競合他社がシェアを占めており、しかも、いずれの競合他社は社歴が長く、実績豊富、信頼も抜群だったことです。競合他社は「想起集合」される企業ばかりなので「非知名集合」にカテゴライズされるK社が、競合他社をおさえて購入・受注をわずか1カ月で目指すのは、可能性はゼロでは無いですが、勝率はかなり低い。
そこで時間はかかりますが、1年半かけて「非知名集合」から「想起集合」に入る目標を策定。想起集合にさえ入れば、プル型で問合せ・商談を獲得できる可能性が一気に上がります。
ただし、すでに「想起集合」に入っている企業群とは異なる優位性も、同時に業界人に認知してもらえなければ、想起集合に入れたとしても、次のステップへ進めません。そこで「処理集合」に入るための施策実行時には、「K社の強み=競合他社との違いを伝える施策」も実施しました。
取り組みを開始して7カ月。徐々に、月平均0~2件程だった新規問合せが、月6件前後に増加。取り組み開始から1年過ぎたころからは月10件前後まで増えました。
おそらく「非知名集合」にカテゴライズされていた当時、事例1のP社のようにいきなり「問合せ獲得・受注」を目指すダイレクトな広告施策を行っていたら、ざるに水を流し続けるようなもので、現在も状況は変わっていなかったのではと思います。
時間はかかりましたが、結果的には最短距離で受注数・商談数を増やすことに成功。K社はメルマガ広告出稿以外にも、PR施策、ブランディング施策など複数施策を実施しました。
BtoB企業の新規開拓 ブランディングも重要
最近はBtoBビジネスにおいて、ブランディング強化が仕事獲得につながる、ということでブランディング強化に取り組むBtoB企業がじょじょに増えています。「ブランディングというと感覚的で苦手。合理性やロジカルな意思決定が重視されるBtoBビジネスの世界では不要」と考える方々もいまだに多いですが、断言します。昨今の成長し続けるBtoB企業に共通しているのは「ブランディング」力の強さです。
まぁ、モヤモヤする部分もあるかもしれませんが、だまされたと思ってまずは以下をお読みください。ブランディングの威力にハマります。
BtoB企業、知られなければ検討されない。検討されなければ購入されない
以上、事例を見ていくと問い合わせ数、相談数、リード獲得数、その先にある受注や購入数を上げていくには、「想起集合」に入っている状態になることが、いかに重要かが理解できます。
一言で言うと「知られていなければ検討されない。検討されないから当然、買われることはない。この状態を打破するためには、想起集合に入ることを目標に事業活動を行いましょう」ということです。
自社がターゲットとする業界の中で、自社は上記図のうちの、どこにカテゴライズされるのかを考える。その上で、とるべき施策を検討すれば、最適解を導きやすくなります。新しい広告施策やマーケ施策を検討するとき、真っ先に「その施策でどれだけ売り上げにつながる?」ではなく…
「自分たちは、今●●にカテゴライズされる企業だから、▲▲の施策で~~を目標にしてみよう。であれば、■か月後には、ーーの成果を狙えるはず」
といった視点で考える方が、精度の高い意思決定ができるようになります。BtoBマーケの草分け的存在である、シンフォニーマーケティング社の社長が「BtoBは科学(ロジカル)が7割、感性が3割」と言及しているように、BtoBマーケティングはロジカルに戦略を立案することで成果を出せるので、そこが面白いところです。
つまり再現性が高いということ。ハウツーさえ理解すれば、自社もどんどん成長していきます。念のため、上記でご紹介した「感性=ブランディング」も外せないことは、再度お伝えしてお きます!
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